すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「えっと……ご飯とお風呂、どっち先にする?」

「風呂」

「わかった、用意してくるね」

「ん……そのまま先に入っとけ」

「え?あ、うん、じゃあ……お先にお湯もらうね」

パタパタと小走りで浴室に向かった藍里は、少しだけ浮かれた気分で浴槽に湯を張った。

最後の智大の行動はよく分からなかったが、藍里のお気に入りの公園に恐怖を感じることなくまた行けたこと。
智大と一緒に……とは言えないが、リスと遊べたこと。
智大も吉嶺に妬んだり、不安に思うことがあったりすること。
ワンピースを買ってもらえ、似合うと言われたこと。
手を繋いで買い物をしたこと。

どれも結婚する前もした後でも経験したことがないことばかりで、とても楽しくてすごく嬉しかった。

藍里は微かに感じる幸せに頬を緩めてふふっと笑いながら薄くしていた化粧を落とし、あらかた溜まったお湯を確認するとワンピースを脱ぐために背中のチャックを下げた。

余裕の出来たワンピースの隙間から腕を引き抜き、ワンピースを脱いでいく。
下着だけの姿になった時、どこからかパシャッという音と同時に強い光が瞬いた気がして、パッと光の発生源だと思われる脱衣場にある窓を見た。

すると、また光と同時にパシャッと何回か連続で音が鳴り、藍里は何が起きているのか理解するとワンピースで体を隠し、大きな悲鳴をあげた。
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