すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「藍里っ!?」

ほどなくして智大が脱衣所に飛び込んできたのを見て藍里は腰を抜かして座り込み、立てなくなった状態で目にたくさんの涙を浮かべて智大を見上げた。

「と……智く……窓……写真……撮られ……」

ガタガタ震えすぎて言葉も上手く纏められず、片言になりながらワンピースを胸の前で握り締めていると、智大はすぐに状況を察して気付かないくらいほんの少し開いていた窓を全開まで開け、外の状態を確認した。

「……逃げられたな」

藍里が悲鳴をあげたと同時に足音が聞こえたから、恐らくその時に逃げたのだろう。
智大は窓を閉めて鍵をかけると、胸に抱えたワンピースごと藍里を抱きしめた。

「落ち着け、大丈夫だ。もういない」

「でも、写真……どうしよ……」

「いいから落ち着け、大丈夫だ」

智大の低い声も、顕になってる背中に回されている逞しい腕も、前までなら怖くて仕方なかったはずなのに何故か心から安心できて、藍里は目を瞑ると智大の首筋に顔を埋めた。

どれくらいそうしていたのか、寒さに身震いして自分があられもない格好をしているのを思い出すと同時に頬に熱が集まった。
藍里が我に返ったのに気付いた智大が少しだけ離れると、額同士を合わせた。
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