すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「落ち着いたな?」

「う、うん……」

「ならとりあえず風呂に入れ。冷えてる」

入りたいのは山々だが、藍里はさっきの盗撮の事もあり今一人でいるのを怖く感じた。
だからと言って入らないのも嫌だし、一緒に入ってもらうという選択肢は最初から存在しない。

視線をさ迷わせ悩んでいると、智大は藍里の頭に手を置いて些か乱暴に撫で回した。

「風呂から上がるまでここにいて、話し相手になってやる。だから入ってこい」

「え……でも、そうしたら智君寒く……」

「寒くない。俺の気が変わらないうちに早く入れ」

そう言い終わると智大は徐に立ち上がって洗面台の下の引き出しを開け、何かを取り出すとこっちを見ずに投げ渡してきた。
慌てて手を出して受け取ると、それはいつも藍里がリラックスしたい時などにまれに使っている入浴剤だった。

「これ……」

「さっさと入ってこい」

何度も同じことを言う智大は決してこちらを向かない。
チラチラと智大の動かない背中を盗み見しながら下着を脱ぐと、藍里は急いで浴室へ入った。
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