すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「……うん。一人だったら怖くてもう行けなかったかもしれなかったけど……二人なら……」

「二人?」

「うん……一人はまだ少し怖いから、智君と二人ならまた行けそう……。お気に入りの公園だったから、嬉しい」

「そうか」

藍里の素直な気持ちに素っ気ない言い方で返した智大だったけれど、その声がいつもと違って少し上擦っていて、照れているのを誤魔化そうとしているらしいのに気付いて藍里は一人微笑んだ。

「あ……あのね智君。どうして私が落ち着きたい時にいつも使う入浴剤がこれって分かったの?」

この入浴剤はお風呂から上がっても体に香りが残るので、特殊班の智大が職務中に香ってしまわないように休みの前日とか夜勤で夜に家で風呂に入ることがない時に使う、限定的な入浴剤にしていた。
偶然だろうかと思いながらも、迷う素振りを見せずに選んで投げ渡してきた智大に聞かずにはいられなかった。

「そんなの、見ていたら分かる」

「見る?何を?」

「その日の藍里の様子から風呂上がりの様子。そして、後から風呂に入った時に使われてる入浴剤の関連性を考えたら……いや、何でもない。忘れろ」

途中、智大が自らの言葉を遮った。
耳を澄ましていると、普通に考えたらこんなの、気持ち悪がられるだろ……。と呟いているのが聞こえた。

普段から藍里の様子を気にしてくれていること、些細な情報から藍里がどんな時にどんな物を好んで使っているのかを知ってくれていたことに、藍里は気持ち悪さより先に嬉しさが込み上げて幸せな気持ちになった。
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