すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「落ち着いたな?」

ぐったりしたままだが藍里の呼吸が落ち着いたのを見計らった智大に声をかけられ、藍里は小さく頷いた。
次に聞かれることは分かっていて、藍里はさっきのように智大の首に腕を回して控え目に抱きついた。

「藍里、一度離れろ。話がしにくい」

「ゃ……お願い……怖い……」

何度も鳴る電話に、知らない人からのメッセージ。
しつこいインターホンに、いつこじ開けられるか分からない玄関の鍵。

思い出すだけで恐怖が蘇り、震える体にまた乱れそうになる呼吸。
途切れ途切れになりながらも懸命に言葉にした願いに、智大は大きく息を吐くと藍里の背中に腕を回し抱きしめた。

「何があったのか、どうして発作がおきたのか、今藍里が俺に話せずに隠していることも全部話せ。
一つでも隠したり本当のことを言わなかったら、すぐに引き離すからな」

智大の低い声のトーンで引き離すと言ったのが本気なのを察した藍里は、ゆっくり頷いた。
そしてぽつりぽつりとさっきまであったこと、昨日の盗撮犯に心当たりがあったこと、最近感じる絡みつく視線や白い封筒の事を伝えた。
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