すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「頼りない、なんてことなかったの」

涙に濡れたか細い小さな声で俯いたまま呟くと、密着していたからか辛うじて聞こえたらしい声に智大が頷くように顔を動かしたのを感じた。

「話さないとって……相談しないといけないってことは分かってたけど……どうしても言えなかったの」

「……それは、俺が怖いから言いにくかったのか?」

「違う……違うの……私が、悪いの……私が、こんなだから……」

ゆるゆると何度も首を振ると、止まったはずだった涙が再び溢れて頬も智大の服も濡らす。
どうしようもなくて強めに抱きつくと、智大はそれに応えるように強く抱き直してくれた。

「知られたく、なかったの……。ただでさえ喘息持ちで……発作とか、怯えたくないのに、怖がったりとか……迷惑かけて、るのに……。
こんな……封筒とか、視線とか……変な人が……って話して……っ……これ以上面倒な奴だって、邪魔な奴だって思われたくなかったの……っ!」

思っていたことを口に出したら感情が溢れて止まらなくなり、この日初めて藍里は今まで我慢していたこと全てを吐露するとそのまま声を上げて泣き出した。

今まで悲しいことがあって泣きたくても、持病のせいで背徳感を拭いきれず、唇を噛んで声を漏らさないように涙を堪えて生きてきた藍里の初めての感情を爆発させたような泣き方に、智大は安堵の息を吐いて優しく抱きしめた。
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