すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「面倒だって、そう思われたくなくて話せなかったのか?今回のことも、今までのことも、誰にも……」

「っ……ごめ……なさ……」

激しく泣いたせいでしゃくり上げながら謝ると、智大はポンポンと背中を叩いた。
乱れた呼吸が泣いたせいなのか発作のものなのかを注意深く観察され、やがて目を細めると智大は一言、馬鹿だな。と言った。

「今までずっとお前の傍にいて、ずっと見てきたんだ。病気のことも、俺のせいで虐められてきたことも全部知ってるし見てる。
その上でずっと好きだったし、守れなかった事をずっと後悔してきたんだ。今更こんなことで迷惑だとか邪魔だなんて思わない……思えるわけないだろ」

こんなに好きなのに……。と耳元で言われ、藍里は目を見開くと同時にヒュッと喉を鳴らした。
そのまま止めてしまった呼吸に智大が苦笑しながら何度も背中を叩いた。

「ほら、息止めるなって。ちゃんと呼吸しろ。俺がお前のこと好きなのは昨日もちゃんも言っただろ」

「うん……でも……別の問題だって……思って……」

「別の問題もなにも、何の問題も感じてない。好きな女が俺を頼って話してくれたら嬉しいし、なんとか助けようと思う。
そうとしか思わない。迷惑だとは絶対思わない」

真剣な声で、どこか勝ち気な笑みを浮かべて言い切った智大に、藍里はもう何度目になるか分からない涙を溢れさせて泣き出した。

「怖かったの……ずっと、視線とか封筒とか気持ち悪くて……でも、言えなくて……。怖い……怖いよ智君……助けて……っ」

「分かった、絶対に助ける。今までよく頑張ったな」

「ふっ……智君……」

ぎゅうぎゅう強く抱きつく藍里に智大は何度も、頑張った。もう大丈夫だ。と言っていた。
連れ去り事件で助けてくれた時もそう言ってくれた智大に藍里は、もう大丈夫なんだ、これ以上頑張らなくていいんだ。と安心できた。
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