すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「これが今まで来た封筒ですね?中身を見てもいいですか?」

「は、はい」

今までの被害などを智大が簡単に説明すると、届いた手紙を見せて欲しい。と言われ、あの気味の悪い封筒は今、吉嶺と松浦の目の前に積まれていた。
松浦が手を伸ばし一つ一つ確認しているその横から吉嶺が見ていると、二人はどんどん顔をしかめていった。

「“貴女は僕の天使”、“潤んだ瞳で見つめられたい”、“その声で名前を呼んでほしい”……このストーカー、俺と気が合いそうですね」

「お前、警察向いてないだろ」

こいつに近付くな。と吉嶺の言葉に呆れた顔をした智大は藍里の肩を抱いてグイッと身を寄せさせた。
突然の行動に驚いたが、吉嶺の言葉も怖かったので藍里もそのまま智大に身を預けていると、松浦がひどく真面目な顔をして頭を下げた。

「すみません。言葉だけを聞くと本当に向いてないんですけど、腕は確かです。戯れ言だと思って聞き流してもらえると助かります」

「松浦まで酷くないか?……まあ、藍里さんに怖がられたくないので冗談……でもないですけど、冗談にしときます」

「冗談じゃないんだな?なら、お前は今すぐ帰れ」

「いやいやいやいや、これがチャンスになるかもしれないので帰りませんよ!」

チャンス?と首を傾げると吉嶺は藍里に向けて笑みを浮かべていた。

「もし俺が格好良くストーカーを撃退したら、藍里さんが俺にときめいてくれるかもしれないじゃないですか」

「え……えっと、それはない、かと……」

男性恐怖症の藍里が智大を好きになれたのも奇跡に近いと思ってるのに、他の男性にもときめいたりするなんて考えられなかった。
考える間もなく否定するが、吉嶺は自信ありげに、いいえ。と答えた。
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