すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「智君と一緒にいたらドキドキするし、抱きしめられたら安心するし、今でも好きだなとは思うの……。
でも、そう思えるようになったのはあの事件の後だったから……だから、怖かったドキドキの気持ちと好きだって気持ちを勘違いしてて、いつか前みたいに……智君のことが怖くて仕方ないように戻っちゃうんじゃないかって不安で……」

「だから最近上の空なことが多かったのか」

納得したような様子の智大は、不機嫌な顔から呆れたような顔をした。
そして一言、馬鹿だな。と言い捨てた。

「ば……!?」

「馬鹿だろ。連れ去られる前の銀行強盗の時の事件はどうなる?恐怖の時に感じる動悸が恋愛感情の動悸と錯覚するなら、あの場にいた全員が今頃カップルだ」

「あ……」

「連れ去り事件の時の俺と藍里と同じ状態で吊り橋効果があるなら、他の事件で被害者を助けに入った特殊班の連中も入江もとっくに彼女が出来ているはずで、彼女がほしいって喚いているはずがないよな?」

「そう言えば……」

家に遊びに来た時に、入江は彼女がほしいと騒いでいた。
吊り橋効果があるのなら、入江はとっくに彼女が出来ていたであろうことに藍里は納得した。

「じゃあ、吊り橋効果なんてものはないのかな……」

「いや、ないことはないだろうな」

簡単に否定した智大に藍里は、えー……。と声を漏らしたが、智大はふっと微笑むと藍里の顎からやっと手を離して頭を撫でた。
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