すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「私……あの事件の時じゃなくて、その後……頑張ってくれてたり、笑ってくれる智君を見て好きだなって思った……」

「そうだろうな。どう見ても事件の時もその後もお前まだ俺にビクついてたし、吊り橋効果の影響なんて全くなかっただろ」

「じゃあ、智君を好きっていう気持ちも、抱きしめてもらって安心するのも、ずっと傍にいてほしいって思うのも、全部勘違いじゃなかったんだ!」

良かったぁ!と安心しきった顔でふにゃっとした微笑むと、それを見た智大が一瞬固まった。
どうしたのかと思っていると、突然後頭部を掴まれ噛みつかれるようにキスされた。

「んっ!?」

「っ……お前、本当ずるい」

すぐに離れた智大はそう言ってシートの上にドサッと勢いよく仰向けに寝転び、腕で顔半分を隠してしまった。

「と、智君の方がずるいよ……いつも急に……」

「絶対お前の方がずるい。キスしたくなるような事を言ったり可愛い顔したりするくせに、それが全部誰かいる時か外なんだ」

家なら人目を気にしたり、手加減したりせずに嫌と言うほど甘やかすのに……。と続いた言葉に藍里は顔を真っ赤にさせた。
ドキドキする胸を押さえ視線をさ迷わせてから、藍里は覚悟を決めて息を吸い込むと、少しだけ身を屈めて智大に顔を近づけた。

「なら……今日帰ったらたくさん甘やかしてくれる……?」

耳元で囁くと智大は腕を少しずらして目だけを出した。
恥ずかしさのあまり目が潤んでしまった藍里は、目を反らさないように頑張って見下ろす。
暫しその状態で見つめ合うと、やがて智大がゴクッと喉を鳴らした。

「……いいんだな?嫌だって言っても離せないぞ?」

「嫌なんかじゃ……ない。たくさん甘やかしてほしいし、智君も、甘えてほしい」

勇気を出して言った言葉に智大は驚いたように目を見開くと、やっぱりお前ズルい。と再び腕で顔を隠した。
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