すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
それからも暫く歩いていたが、藍里は智大に言われて人気のない開けた場所にあるベンチに座らされた。

「智君……」

さっき耳元で告げられた話に不安になり、藍里は目の前に立つ智大の袖をギュッと掴んで縋るように見上げる。

「大丈夫だ、絶対に離れないし何も見せない。怖い思いをさせるが傍にいるし、何があっても守る」

安心させるような強気な笑みを浮かべた智大に、藍里は少しだけ頷く。
智大の声と言葉を聞くだけで無意識に入っていた力が抜けていくのを感じたその時、一人の警察官が近付いてきた。

「永瀬さん、こんなところでデートですか?」

声をかけられて顔を上げようとしたが、智大に頭の上に手を置かれてそれは叶わなかった。
すぐに手を離した智大は、素早く藍里と警官の間に立つ。

「そうです。天気もいいですし、妻もたまには気分転換にって連れ出したんです」

「必要以上に引きこもってばかりだとストレスが溜まりますからね。やっぱり外に出るのが一番ですよ」

智大と警官にそっと目を向けるが、藍里からは大きな智大の背中しか見えない。
藍里が一言も発することがない間も二人はずっと話していたが、警官がふと思い出したように、そう言えば……。と口にした。

「最近は不審者情報も聞かなくなったので、そろそろ日常生活に戻っても大丈夫ですよ」

その言葉に藍里は喜びのあまりパッと顔を上げるが、智大は何かを考えるように首を傾げていた。
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