すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「あ……そ、そう、吉嶺……吉嶺です。いやー、僕、最近赴任してきたばかりなので、まだ名前を覚えきれてなくて……」

「藍里の警護をしてもらう警官の顔と名前は全員把握してる。その中にお前はいなかった」

「いや……だから本当につい最近赴任してきて……」

「誤魔化すのは止めておけ。警官の服を真似たようだけど、至る所の細かい部分が全然違う。
本職からしたら偽物だってすぐ分かるんだよ、ストーカー」

「「っ!!」」

決定的な言葉に、藍里と警官に扮したストーカーは息をのんだ。
思わずじりっと後退ろうとしたがベンチがあって動けない。
藍里が怯えて逃げようとした動きを止めるかのように、智大が手を掴んできた。

「や……智君……」

「大丈夫だから俺から離れるな。絶対に守るから」

足を止め、必死の思いでその場に立ち止まった藍里に智大は首だけで振り返り微笑んだ。
その笑顔に勇気をもらった藍里は、智大の手をぎゅっと握り返す。

「……ち、違う……僕じゃない……」

「間違いない、お前だ。ショッピングモールでも道端でも、こいつと一緒にいて妙な視線を感じる時には必ずお前がいた。
その警官紛いの制服を着たお前がな」

「っ……それだけじゃ僕がストーカーだなんて言えないじゃないか……!」

「お前、こいつのスマホに電話かける時に非通知にせずにかけただろ。そんなのすぐに持ち主が判明する。
しつこく出してきた封筒も便箋も指紋が採取された。検証すればすぐに分かるだろ。
決定的な証拠となるのは、お前のスマホだ。……あるんだろ?盗撮したボヤけた写真が」

ビクッと反応したのは藍里の方で、あの時の恐怖を思いだしガタガタ震えだした藍里を智大はそっと抱き寄せた。
決して藍里がストーカーを見ないように頭を自分の胸に押し当てる形で抱きしめられ、藍里は震える手で智大の服を掴んだ。
< 228 / 420 >

この作品をシェア

pagetop