すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「ごめんなさい……。やっぱり、好きだなって意味でドキドキするのは智君だけなんです……」

「……そう、ですか……。やっと巡ってきたチャンスだと思ったんですけどね」

すごく残念そうな、でもそう言われるのを覚悟していたかのような吉嶺の表情に藍里は申し訳なく思った。
そんな中、どうしても一つだけ伝えたいことがあり、いつもは怖くて口ごもってしまうが今だけはと勇気を出してもう一度だけ口を開いた。

「あ、あの……吉嶺さんも、松浦さんも、皆さんも……守ってくれて嬉しかったです。ありがとうございました!
不安でいっぱいだった毎日でも、安心して過ごせました……やっぱり警察の方って……すごく格好良いです」

はにかみながら微笑んだ藍里に先輩警官は微笑みながら敬礼し、智大は溜め息をつきながら額に手を当てて首を振った。

そして吉嶺は……。

「格好良い?……じゃあ俺、まだ諦めなくていいんですね!?」

「え!?」

「旦那さん、俺、格好良いそうですよ!まだ藍里さんを手に入れるチャンスはありそうですね!!」

「……あるわけないだろ」

「藍里さん、すぐに俺の方が旦那さんより良い男だって気付かせてあげますから、待っててくださいね!」

「え、ええ……!?」

「……すみません、吉嶺共々連行します」

「暫く外に出れないよう願います」

智大の言葉はストーカーに対してなのか吉嶺に対してなのか、はたまたその両方なのか……。
先輩警官は苦笑してもう一度敬礼すると、二人を連れて去っていった。
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