すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「……一回でもかなり堪えたんだ。二回も聞きたくない」

「ご……ごめんなさい……」

自分が何を言おうとしていたのか気付き、藍里はぼろぼろ涙を溢しながら謝る。
そんな藍里の目尻や頬にキスの雨を降らせながら智大は苦笑した。

「今日は謝りながら泣いてばかりだな……。俺は藍里の笑ってる顔が見たいんだけど?」

「だ……って……智君怒って……」

「別に怒ってない」

「じゃあ、どうしてずっと帰ってきてくれなかったの……?」

喧嘩したとはいえ、三日間も智大が家に帰ってこないなんてことは今まで一度もなかった。
だからこそ、嫌われてしまったのではと心配と不安で潰れてしまいそうだった藍里は、千栄に突然電話をして話を聞いてもらっていたのだ。

答えを聞くのが怖かった藍里が小さく震えていると、智大は大きな手で背中を撫でた。
どこか落ち着くその手の動きに震えもいつしか治まると、藍里の額に智大の額が合わさった。

「藍里は熱が出てたし、少しヒステリックになってただろ?その状態で俺が傍にいても良くないと思ったんだ。
……まあ、あんなこと言われてショックなのも多少あったけどな」

苦笑しながら言う智大の目は、あの時のように傷付いた時の目をしていた。
そんな目をさせてしまったのが自分が発した一言なんだと思うと、藍里は心がズキッと痛むのを感じた。

「本当にごめんなさい……もう絶対に言わない。……あの……帰ってこなかった間どこにいたの?圭介さんに聞いても実家にはいないって……」

「署の仮眠室で寝てた。俺が帰らないから班の連中に、“ついに離婚危機か?”ってからかわれてた」

「離、婚……」

「言っとくけどしないからな?やっと手に入れられたのに、こんなことで手放してたまるか」

離婚と言う言葉にドキッと心臓が嫌な音をたてたが、智大は即行で否定した。
その事に安堵の息をつくと、藍里はそっと智大の右腕に触れた。
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