すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
ふと目が覚めると、そこは久々に智大の腕の中だった。
眠ってしまった藍里を片手で運ぶことは出来なかったのだろう智大に申し訳なく思いながら、藍里は両手を智大の頬へと伸ばしてそっと触れる。

多少暖かくなったと言ってもやはり夜は冷える。
藍里は智大にしっかり抱きしめられていたから冷えていなかったけれど、智大の頬は冷えきってしまっている。
少しでも温もってほしくて首に腕を回して抱きつくと、智大が薄く目を開けた。

「ん……藍里?」

「智君、ベッドに行こう?寒かったよね……寝ちゃってごめんね?」

起こすつもりはなかったけれど、起きたならベッドでゆっくり寝てほしい。
そう思って離れようとしたけれど、片手でもしっかり抱きこまれてしまえば、非力な藍里は動くことなど出来ずに困ってしまって智大を見上げた。

「智君?あの、ベッドに……」

「必要ない」

「え……?」

「藍里を抱いてれば温もる。けど、藍里にベッドに誘われるのも悪くないな」

そう言いながら額に、顔にとあちこちキスされて藍里はハッとした。

ーーそうだった……智君の寝起きって、心臓に悪いんだった……!

思い出しても時すでに遅く、藍里が身を捩っても何度声をかけても智大は抱きしめる腕を緩めることなく、そのまままた眠ってしまった。
藍里は朝からの甘すぎるスキンシップに恥ずかしくなり、真っ赤になりながら智大が起きるまで温かい腕の中で大人しくしている他なかった。
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