すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「また偶然を装って藍里に会いに来たのか、ストーカー」

「だから、俺はストーカーじゃないですよ!人聞きの悪い!そりゃ、まだ藍里さんのこと諦めきれてませんけど……」

言いながら見つめられ、藍里は体を強張らせると素早く智大の背中に隠れた。
未だに智大以外の男性への恐怖が完全に消えない藍里は、お世話になった吉嶺と松浦に申し訳なく思いながら顔だけを出して会釈した。

「はぁ……怯えてる藍里さんも、やっぱり可愛い……」

「吉嶺やめろ。問題発言にしか聞こえないから。お久しぶりです、その後どうですか?」

「おかげさまで問題ありませんよ」

「それは良かったです。ところで腕、どうされたんですか?」

松浦の質問に智大は簡単に説明していた。
そんな智大の腕を見て、何か考えるように空を見て、最後に藍里に視線を向けた吉嶺は何かに気付いたようにハッと目を見開いた。

「藍里さんの愛情溢れる、付きっきりの看護……!!」

羨ましい……っ!と続けた吉嶺の言葉に、藍里はぶわっと赤くなると必死に首を振った。

「これくらいで看護なんて必要ないだろ。片腕でも大抵のことは自分で出来る」

「え……じゃあ、飯食べさせてもらったり、着替え手伝ってもらったり、風呂を手伝ってもらったりとかしないんですか!?
そんな勿体ない!何の為に怪我したんですか!!」

「少なくとも、そんなことを藍里にやらせるために怪我した訳じゃないな」

吉嶺の欲望溢れる妄想に、智大は心底呆れた声を出していた。
それからも延々と怪我をしたことによって増えるスキンシップの素晴らしさを語って止まらなくなっていた吉嶺は、最終的に松浦に無理矢理引き摺られていった。
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