すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「どうした?」

「あのね、お願いがあるんだけど……」

「願い?」

今から言うことは藍里にとって大事なことだけど、それと同時にとても恥ずかしいことだった。
膝の上に置いた手をモジモジとさせていれば、その手の上に智大の無骨な手が乗せられた。

「お前の頼みなら何でも叶えてやるから、言ってみろ」

「何でも……?」

「ああ、何でも」

強気な笑みを浮かべて言い切る智大を見て決心がついた藍里は、逆に智大の手を握るとずいっと身を寄せた。

「わ……私に智君の手が治るまでの間、お世話させてほしいのっ!」

「世話って……別に必要ないって言っただろ?」

「でも、職場の先輩は旦那さんが怪我したら手伝うし、旦那さんも甘えてくると思うって言ってて……。だから私も手伝いたいし、智君に甘えてほしいっ!夫婦なんだから支えあいたいのっ!」

言えたっ!と藍里は達成感を感じていたが、暫くしても智大からの返事はなかった。
おや?と首を傾げて智大の顔を覗めば、智大は目を丸くして硬直していた。
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