すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
〈智大side〉

「“夫婦だから支えあいたい”、ねぇ。……さすが永瀬の嫁さん、見た目通り健気だな。じゃあ、それからずっと付きっきりで世話してもらってるのか?」

「さすがに付きっきりではないですけど、まあ……それなりに」

仕事に復帰し、出来る訓練には参加して昼を過ぎた頃。
弁当を食べながら休みの間の話を室山にしつこく聞かれ、さらにはニヤニヤと笑われて智大は眉を潜めた。

「数日前は周りに離婚寸前とか言われてたのにな。災いを転じて福となすってことか?」

「福とは思ってないですけど、仲直りのきっかけになったのは確かですかね」

「あ、じゃあ俺のミスも結果的には良かったってことですよね!」

「は?んなわけねぇだろ!そんな緊張感のない考え方をしてるからミスを起こして仲間を危険にさらすんだ!!
その甘ったれた根性、今すぐ叩き直してやるっ!!」

「ええっ!?室山先輩が先に……って、すみませんっ!!気合い入れ直しますので、勘弁してくださいっ!!」

入江の不謹慎な言葉に激怒した室山は入江の着ている服の襟を掴むと、そのまま休憩室を出ていった。
きっとこれから地獄の訓練を受けるのだろうことを思うと智大はほんの少しだけ同情し、弁当に視線を移した。

藍里の手作り弁当は片手でも食べやすいように工夫されていて、一口サイズのおかず全てにピックが刺さってる。
手間も時間もかかるだろうに、一つ一つ丁寧に愛情を込めて作られたことが分かるそれを見て、智大は誰もいない休憩室で一人、目を細めて柔らかく微笑んだ。
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