すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
〈智大side〉

「お帰りなさいっ!」

「ただいま」

家に帰りインターホンを鳴らすと、藍里がパタパタと駆け寄ってくる足音がしたと思ったらすぐに満面の笑みでドアを開けてきたので、智大はその可愛らしさに堪らず、片手でそっとその体を抱きしめた。

前よりは食べられるようになったおかげで幾分か肉付きが良くなったと言ってもまだまだ細い藍里は、力を入れれば簡単に折れてしまいそうだった。
すぐに体を離して触れるだけのキスをすると、藍里は恥ずかしそうに、けれどどこか嬉しそうに微笑んだ。

ーー私も手伝いたいし、智君に甘えてほしいっ!夫婦なんだから支えあいたいのっ!

そう訴えた藍里が健気で可愛くて、衝動に任せてあの場で押し倒さなかった自分を誰か褒めてほしいと思いながら、智大は藍里に寄り道して買ってきた菓子パンを渡してから着替えを手伝ってもらっていた。

甲斐甲斐しく世話をしてくれる藍里に礼を言うと、藍里はにこりと微笑む。
負担にさせたくなくて最初は必要ないと言っていた手伝いも、こんな風に藍里が笑ってくれるならやってもらって良かったと思えた。

さすがに風呂は手伝いなく済ませるが、髪を拭くのは難しくて手伝ってもらっていた。
片手では食べにくい食事も、藍里が恥ずかしそうにしながら食べさせてくれることに幸せを感じる。

「まるで新婚みたいだな」

「っ……!」

ぽつりと呟いた言葉に藍里は食べさせていた手を止めて真っ赤になっていた。
そんな様子も可愛くて、そっと頬を撫でると藍里は目を細めて手に擦り寄った。
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