すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「すぐに休憩室で休ませてください!あと、あいちゃんの荷物の中に吸入薬があるはずなので、それを持ってきてください!」

「わ、分かりましたっ!!」

圭介の的確な指示と先輩の慌てたような声とバタバタとした足音が聞こえる。
それからは息が苦しくてあまりよく覚えていなかったが、やっと落ち着いた後に先輩に聞いた説明によると、圭介は休憩室に藍里を運ぶと先輩が持ってきた藍里の荷物の中から発作がおきた時に使う吸入薬を取り出し、そのまま献身的に介抱してくれていたそうだ。

そして藍里の発作が落ち着いたのを確認すると、自分が近くにいてまた発作がおこらないようにと速やかにマルを連れて帰ったらしく申し訳なく思ってしまった。

「そう、なんですね……。先輩にもご迷惑をおかけしました」

頭を下げて言うと先輩は、何言ってんの!と言った。

「迷惑だなんてこれっぽっちも思ってないわよ。
ただ、また発作がおこった時に慌てて何も出来ないのは悔しいから、次はどうしたらいいのか教えてくれる?」

本当に心配している声色で言われ、藍里は申し訳ない気持ちになるのと同時に心配してもらえて嬉しい気持ちにもなった。

圭介にも本当に悪いことをしてしまった。
今度お詫びと感謝の言葉をちゃんと伝えられたらと、そう思いながら藍里は未だに力が上手く入らない手を軽く握るのだった。
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