すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
長かった遊歩道をゆっくりと歩いていたはずなのに、終わってみればとても短くあっという間だった。
近くで売っていた桜ソフトクリームを食べながら、藍里はさっきスマホで撮ってもらった写真の画像を見ては頬を緩ませていた。

「何度も見て、よく飽きないな」

「うん、だって……なんか嬉しいから」

写真には小さめの桜の木、その隣ではにかみながら手を繋ぐ藍里と智大が写っていて藍里は、ふふっ。と笑った。

「智君、一緒に写ってくれてありがとう」

「……礼を言われることでもないけどな」

「あと桜、すごく綺麗だった……連れてきてくれてありがとう」

笑顔でそう言えば、智大は微笑みながら静かに頷いた。
振り返ればさっき通ってきた遊歩道に咲く桜が遠くに見えたので、暫く眺めていたら智大が、そう言えば……。と話だした。

「夜になったらライトアップもされて、幻想的な景色になるらしいぞ」

「わぁ……見てみたいね!でも……」

確か天気予報では夜は雨だと言っていた。
見上げれば来た時よりも空模様は大分怪しくなってきているし、きっとこの桜も明日にはほとんどが散ってしまうのだろうと思うと、少しだけ残念な気持ちになった。

「今回は無理だけど、また来年見に来よう。……藍里はライトアップとかイルミネーションとか、そういう所は好きなのか?」

「え?うん、好きだよ。キラキラしてて神秘的なところとかがロマンチックで好き」

「それなら今度……」

智大が何か言いかけた時、頬に水滴が落ちてきた。
地面を見てみるとぽつぽつと色が変わりだして、予報より早めに雨が降りだしたのに気付いた。

「雨……」

「ヤバイな。本降りになる前に駅に戻るぞ」

「あ、うん」

智大は藍里の手を掴むと足早に歩き出した。
足の長さが違うので智大が大股で、しかも足早に歩けば、どうしても藍里は走る形になってしまう。

雨が本降りになった頃には藍里は若干息を乱していて、なんとか間に合った帰りの電車の座席にくたりと座っていた。
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