すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「その服……」

「ふ、く……?」

「肩とか出しすぎじゃないか?」

「え……でも、こういうデザインで……」

「こんなに露出してるのは今まで見たことない」

「ん……っ」

指先でそっと鎖骨をなぞられて背中にゾワッとしたものを感じると、藍里は自分から出た甘い声に慌てて手を口に当てた。
智大の瞳がどこか熱っぽくなってるのはきっと気のせいではなくて、藍里は恥ずかしさから智大の腕から慌てて抜け出した。

「せ……先輩が選んでくれた服なの……!」

「先輩?……ああ、あの時の服か」

藍里の帰りが遅いと心配した智大と玄関で鉢合わせした時に持っていた紙袋。
藍里はもじもじしながら智大を見上げると、この服を買った経緯を思いきって話した。

「ど、同窓会で……同級生の誰よりも綺麗だって思われたくないかって言われて……智君モテるから……隣にいても似合う人になりたくて……」

理由を話すのがこんなに恥ずかしいと思ってなかった藍里は真っ赤になりながら話すと、智大は驚いたように僅かに目を見開いた後に視線を僅かに反らしながら徐に口を開いた。

「どちらかと言えば、藍里は綺麗じゃない」

「え……」

綺麗じゃないとキッパリ言われ、藍里は頭が真っ白になった。
小柄な藍里がどう頑張っても“綺麗”になんてなれないのは分かっていたが、面と向かって言われるとやはりショックすぎてまた俯きそうになると智大がそっと腕を掴んだ。

「勘違いするなよ?綺麗じゃなくて、可愛いんだ。ただでさえ可愛いのに、こんな格好してみろ……また変な奴等に目をつけられて……」

「あれ……藍里さんじゃないですか!?」

智大が懸命に伝えてくれようとした言葉に喜びが沸き上がりかけた時に吉嶺の声が聞こえた。
目の前の智大がげんなりとした表情をしたので、藍里は思わず苦笑してしまった。
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