すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「……お前、本気で藍里のストーカーに成り下がったんじゃないだろうな?」

「そんなことないですって!!そりゃ、パトロールしてたらこっちに藍里さんがいそうな気がすると急に直感が働いて、こっちに来ましたけど……」

「……お前、相当ヤバイこと言ってる自覚あるか?」

智大がかなり呆れた顔をしているのを気にした様子のない吉嶺は、藍里の姿を見るなり目を輝かせだした。

「藍里さん……!今日はすごく可愛らしい格好してるんですね!いや、セクシーって言うのかな……とにかく、凄く俺好みの服装で今すぐ連れ帰りたくな……」

「喋るな変態」

吉嶺の言葉を智大が止めたので、藍里は吉嶺が何を言いたいのか分からず首を傾げた。
ただ、好意的な感想でこの服装を褒められたのだろうと思った藍里はおずおずと口を開いた。

「あ、あの……ありがとうございます……?」

首を傾げたまま、身長差で必然的に上目遣いとなる藍里に吉嶺はクラッとよろけると口に手を当ててガッツポーズをした。

「こちらこそありがとうございます……眼福です……っ!」

「眼……?」

「気にしなくていい。そろそろ行くぞ」

その場で身悶えている吉嶺を無視することにしたらしく、智大は藍里の腰に自然と手を回すといつもより密着して歩きだした。
その普段とは違う距離にドキドキしながらたまに智大を見上げると、その度に智大は藍里に視線を向け柔らかく微笑んでいた。
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