すれ違いお見合い結婚～相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「藍里、こっちこっちー！」

「千栄！」

居酒屋の前まで行くと、電話で言っていた通り千栄が待ってくれていた。
久々の再会に手を取り合って喜んでいると、千栄は藍里の姿を上から下まで見て目を細めた。

「凄く可愛いじゃない。それは誰のためのお洒落なのかしらね？」

「そ、それは……」

ニヤニヤと笑みを浮かべながら言う千栄に、智大のためのお洒落だと言いづらくなった藍里はどう誤魔化そうかと必死に考えを巡らせていた。
そんな藍里から視線を後ろに移した千栄は、さらに口角を上げて笑っていた。

「ねぇ、永瀬。誰のためのお洒落だと思う？」

「そんなの、俺のために決まってるだろ。それ以外認めない」

「と、智君……！」

その通りなのだけど当たり前のように言われるのも恥ずかしくて、藍里は見るからに慌てていると千栄が吹き出して笑いだした。

「あははっ！！なんだ、本当に大丈夫そうじゃない。藍里も無理した様子もなくていつも通りだし、永瀬も相変わらずの態度だけど、前よりも藍里にベタ惚れなのが良く分かるわ」

「ち、千栄……！」

安心してもらえて嬉しいけれど、恥ずかしくて仕方がない。
藍里は真っ赤になった頬を両手で押さえると、それを見た千栄がさらに笑った。
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