すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「疲れたぁ……」

初めての同窓会はとても楽しかったけれど、友人達に智大との事を聞かれたり、からかわれたり、冷やかされたりと大騒ぎして、藍里はクタクタに疲れて家に帰りつくなりリビングのソファに飛びついた。

「揉みくちゃにされてたな」

「うん……あんなに騒いだの久しぶり。でもすごく楽しかった……」

「二人でケーキ切ったり?」

「まるで結婚式みたいだった……ね……」

「藍里?」

楽しく話していたのに藍里の声のトーンが突然下がったからだろう。
智大が訝しげな眼差しを向けてきたが、藍里は暫く無言で考えると徐に口を開いた。

「えっと……こんなこと言うのもなんだけど……私、結婚式のこと覚えてなくて……」

「ああ……」

「今になって覚えてないことが少し残念に思えて……どんなことしたのかなって……。その、指輪の交換とか、誓いのキスとか、今日みたいにケーキ切ったりしたのかなって……」

以前なら覚えていないことが心の自己防衛に繋がっていたから、誰かに話を聞こうとか思い出そうとか全く思わなかった。
けれど今となっては覚えていないことが勿体ないと思ってしまい、藍里は申し訳なく思いながら智大に聞くことにしたのだが、智大は少し微妙そうな顔をしていた。
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