すれ違いお見合い結婚～相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「作るなよ……」

小さく呆れたように呟かれ、藍里は息をのむ。
ドクッと一瞬だけ心臓が嫌な音をたてたので、咄嗟に自分の胸を上から押さえつけた。

戸惑って目を下に向けると智大は何か買い物をしてきたようで、手に大きな袋を下げていたことに初めて気付く。

藍里の料理ではなく、何か食べたい物があったのだと理解して、藍里は声にならないような小さな声で、ごめん、なさい……。と謝った。

それが聞こえたのかは分からないが、智大は俯いて顔色の悪くなった藍里を一瞥すると真っ直ぐキッチンに向かい、買ってきた物を冷蔵庫に入れるとシチューの鍋に火を着けた。

「……ぁ……」

話しかけようと口を開くが声にはならなかった。
そんな藍里の様子を智大が目線だけで確認すると、また息をつく。

「明日は休みだから買ってきた物は明日食う。邪魔だからそこに突っ立つな」

じっと藍里の様子を観察するかのような眼差しを向けられ、藍里は居心地の悪い思いをしながらなんとか頷いた。
そして智大に言われた通りゆっくりと移動すると、少し悩んだ末にダイニングの椅子に腰かけた。

シチューが温もると智大は自分用の皿に大盛りでよそい、藍里の分はいつも藍里が食べる量より気持ち少な目でよそって持ってきた。

ーー良かった……。これくらいなら食べられるかも……。

その量を見て内心ホッとすると二人手を合わせて、いただきます。と言った。
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