すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「交際0日かぁ……少し違うけど、私達もそんな感じだよね……。おしどり夫婦か……なれるかな……」

「なれるかどうか心配するんじゃなくて、なろうと努力する方が大事なんじゃないか?」

「ひゃっ!?」

わりと近い場所から声が聞こえたのに驚いた藍里は、肩を跳ねさせながら慌てて後ろを振り向いた。

ソファの背凭れに肘を乗せていた智大は、そうだろ?と藍里を見ると、藍里は驚きが抜けきらないまま何度も首を縦に振った。

「心配しなくても、藍里は俺を怖がらないように努力してくれてるから大丈夫だ。……俺が藍里の努力を無駄にして、無闇に怖がらせてしまわないかが心配だけどな」

苦笑しながらそう言った智大に藍里は次は首を横に振ると、智大の腕に両手を乗せて真っ直ぐな眼差しで見上げた。

「智君はすごく努力してくれてるよ!言い方や態度、あと出来るだけ口数を増やしてくれてるところとか……智君が頑張ってくれたおかげで私、智君のこと怖がらなくなったんだもん」

「それでも、まだ完全に怖くなくなったわけではないだろ?」

「それは……」

智大の言葉に藍里は思わず目を反らした。

以前のような常日頃つき纏うような恐怖はないけれど、本当にたまに、先日のオフショルダーの服を着たときのように智大が不機嫌で、その理由をどれだけ考えても分からない時は前の智大に戻ってしまったようで怖くなってしまう。
それだけが好きになった今でもどうしても克服できなくて、嫌でも怯えてしまうのは確かだった。
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