すれ違いお見合い結婚～相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~

〈智大side〉

黙々と小さな口でシチューを食べる藍里に気付かれないように、智大は食事をする藍里の様子を盗み見ていた。

食べる速度は昔と変わらず遅い。
ゆっくりと、それでいて一口が少なく小さいので食べ終わるのにどうしても時間がかかってしまう。

それでもちゃんと食べれていることをこっそり確認しながら、職業上あるようで全くない定時の時間に差し掛かった時にきた圭介からのメッセージを思い出していた。



“あいちゃんが職場で発作をおこした。多分、僕が近付きすぎたせいだと思う。ごめん。
今はもう落ち着いてるから心配しなくていいよ”

「おい、どうした永瀬。
えらく険しい顔してるし、スマホが割れそうなくらい手に力が入ってるぞ？」

指摘されて初めて無意識に手に力が入ってスマホがミシミシと鳴っているのに気付いてやっと力を緩めたが、険しいと言われた顔までは戻らなかった。

ーーあのバカ兄貴……。だから家にも遊びに来させなかったのに……。

忙しくて家にあまりいないのも本当だが、圭介を家に来させたくない理由は他にもあった。
勿論それは男性恐怖症である藍里の事を考慮してだったのだが、まさか圭介が藍里の職場に行くとは思わなかった。

「くそっ……」

「お、なんだなんだ？何があった？」

室山が智大の肩に腕を乗せ、手に持ったままだったスマホに表示されたメッセージを勝手に読むと、瞬時に真面目な顔になった。