すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「……そろそろ寝るか?」

何も反論できなかった藍里は、智大の助け船に静かに頷いた。
決して無理矢理ではない力加減で腕を取られ立たされると、藍里は誘導されるまま素直に寝室に連れられていった。

「そう言えば端の方で丸まって寝る癖、最近なくなったな」

「あ……」

それは智大のことが怖くて仕方なかった時、少しでも離れていたくて落ちそうなほどの端っこで自分の身を守るように丸くなって寝ていたことを言っているのだと察して藍里は言い淀んだ。

「えっと……智君と一緒の時は端で寝ることはなくなったんだけど……智君が仕事で遅い時とか、夜勤で帰ってこない時はどうしても丸まっちゃう……かな」

「ん?俺がいない時だけか?」

「うん……なんか落ち着かなくて……暗い部屋に一人でいると、たまに怖くて……」

それは連れ去り事件の時のトラウマから来るものだったのだけど、いつものこと、些細なことだと思っていた藍里はその事を誰にも話したことはなかった。

しかし、話を聞いてすぐにトラウマだと察しがついた智大は藍里を抱きしめ、そのままベッドに転がった。

「ひゃ……っ!?」

「俺がいないと不安か?」

智大の上に乗る形となった藍里は慌てて退こうとしたが、それを許さないと言うように智大は藍里の背中に回した手に力を込めた。

離れられないと察した藍里はあまり体重をかけないように気を付けながら、智大の胸に頬を寄せると小さく頷いた。
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