すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「わ……!」

言葉が出ないというのはこのことだろうか。
目の前に広がる光景に感動して言葉を失った藍里は、キラキラ瞬く星を唖然としながら見つめ続けていた。

「藍里、一ヶ月前の事を覚えてるか?」

「……えっ?あ、一ヶ月前……?」

ぼんやりしていた藍里は問いかけに反応を鈍らせたが、すぐに我に返ると一ヶ月前の記憶を必死に遡った。

「一ヶ月前って……あ、確か喧嘩しちゃった日……?」

「ああ、初めての喧嘩だったな……。そして、その日はなんの日だった?」

「結婚記念日……」

そう、初めてまともにお祝いできると思って張り切っていた記念日。
藍里が熱を出し無理をして、智大が心配したがお互い言葉足らずだったことが原因で喧嘩となってしまい、お祝いどころじゃなくなったけれど……。

本当なら思い出に残る日にしたかったのにと今でも悔やんでしまうほどで、藍里は無意識に唇を噛みそうになるが、その前に智大の手が顎にかけられ、親指で下唇を押さえられて唇を噛むのを阻止された。

「せっかくの記念日をあのまま終わらすのは嫌だったから、一ヶ月後にリベンジしようと思ってたんだ。
なのに腕を怪我して焦った。早く治さないと車も運転できないし、藍里を連れて行きたい場所に連れて行けなかったからな」

「……だから早めにギプス取ってもらったの?」

「それが理由の大半だな。……名目上は仕事や訓練に支障が出るってことにしてるから、誰にも言うなよ?」

「う、うん……」

人差し指を口に当てて悪戯に微笑んだ智大の仕草や表情に、藍里は心臓が早鐘を打つのを感じながら何度も頷いた。

記念日のやり直しを考えてくれて、その為に無理を言ってギプスを外してもらい、こんなに凄い場所に連れてきてくれた智大の優しさに藍里はときめかずにいられなかった。
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