すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「場合によっては」

「っ……!!」

智大の答えに藍里は一気に血の気が引くと、足の力がなくなりその場に崩れ落ちそうになった。

そんな藍里に気付いた智大は、すぐに藍里の腰を引き寄せるとそのまま抱きしめる。
その逞しい腕と温もり、心配そうに見つめる智大の瞳を見て藍里は涙を流した。

「……やだ……離れたら嫌……」

「藍里……」

「許すとか許さないとか、そんなのじゃなくて……私が……智君が傍にいてくれないとやだ……。もう離れてほしくないって言ったのに……」

一ヶ月前に喧嘩をして、後悔もして……。
仲直りした時には決して離婚しないと言っていたのに、もしや気が変わってしまったのかと不安で震えていると、智大は藍里を落ち着かせるようにゆっくりと小さな背中を何度も撫でた。

「あの時は喧嘩くらいで離婚してたまるかと言ったんだ。それは今でも変わらない。俺からは決して離れないし、一時の感情くらいでは離してやらない。藍里が望む限りずっと傍にいる。
だから、今日は改めて誓わせてほしいんだ」

「誓、い……?」

抱き寄せられていた腕が離れると藍里は無意識にその腕に縋ろうとしたが、智大に左手を両手で握られ動きを封じられた。
揺れる瞳で見上げていると、智大はそっと藍里の左手から手を離した。
< 318 / 420 >

この作品をシェア

pagetop