すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「……指輪なんて今さら贈って……そんなに藍里さんを独占したいんですかね」

「っ……!?」

うっとりと指輪を見ていたから、近づいていた気配に気付かずに驚いて肩を跳ねさせてしまった。
咄嗟に後ろを振り返ると、そこにはパトロール中なのか警官姿の吉嶺が不満そうな顔をして立っていた。

「よ、吉嶺、さん……?どうしてここに……」

「いや、ここに来たら藍里さんがいる気がして……すみません、少しだけ嘘です。子供達向けの交通安全教室やってました。お願いですから引かないで下さい」

吉嶺の嘘か本当か分からない言葉に藍里が顔色を悪くして怯えていると、千栄が藍里の隣ににじり寄ってきた。

「藍里、この人知り合い?」

「あ……警察の吉嶺さん……ちょっとお世話になったことがあって……」

まさかストーカーされて、その件でお世話になりました。だなんて千栄に言おうものなら、何故その時に言わなかったのかと怒られるに違いないと思い、藍里は言葉を濁して説明すると、千栄は胡散臭そうに吉嶺を見上げた。

「で?あなたは藍里のストーカーなんですか?」

「違いますよっ!何でみんなストーカーって言うんですかっ!?そりゃ、藍里さんは俺のタイプど真ん中で、あわよくば永瀬さんと離婚してくれないかなとか未だに思っていたりして、諦めきれてませんけど……」

「そう言うところがストーカーって言われるんだろ」

吉嶺の言葉に答えるように、呆れ果てた智大の声が聞こえてきた。
目を向けると智大は千栄の赤ちゃんを抱っこしていて、手についた草や土を払ってあげていた。
< 322 / 420 >

この作品をシェア

pagetop