すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
〈智大side〉

いつものように風呂に入り、最後に冷水のシャワーを浴びて頭を冷やす。
今日も藍里に対して強い態度と口調で話したり接してしまった事を内心後悔しながら目の前の鏡を見る。

「俺も室山先輩のように笑えばいいのか……?」

思い浮かべるのは自分よりもいい体格をして、豪快な性格と男らしい態度と口調をしながらも、いつでも明るい笑顔で男女問わず慕われている室山だった。

あの人のように笑えればもしかして藍里も……?
と自問するが、藍里を前にすると上手く笑えないのを分かっていて失笑し、勢いよく頭を振って水滴を飛ばした。

寝室に入ると、そこにはいつものようにダブルベッドの端っこに小さく丸まって眠る藍里の姿。
顔に耳を近付け、呼吸が落ち着いているのを確認すると智大は安堵の息を吐いた。

そしてそっと手を伸ばして指先だけで少し冷たくなった柔らかい頬に触れる。

「……無理するな。頼むから……」

その声は夜の静寂に溶け込み、誰の耳にも届くことはなかったが、藍里はその言葉に答えるかのように智大の指先に軽く頬擦りをしたような気がした。

自然と頬が緩むが、すぐに偶然だろうと思い直し、智大は自分用にしては広く空けられたスペースに入ると眠気が訪れるまで藍里の小さな背中を暫く見つめていた。
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