すれ違いお見合い結婚～相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~

妊娠編 幸せの重み

「赤ちゃんは順調ですね。そろそろ聴覚も発達して耳も聞こえるようになるので、外の音やママの声を聞けるようになりますよ。たくさん話しかけてあげてくださいね」

そう医師に言われながら差し出されたエコー写真に目を落とすと、そこには前回よりもしっかりと赤ちゃんの形をしている胎児が写っていた。

「わぁ……」

「最初は形のない袋だった状態なのに、どんどん人の形になるのを見ていくと感動しますよね」

「はい……！」

こくこくと頷きながら返事をする藍里に笑みを浮かべて、医師がカルテを見ながら次の診察の予定を口にした。

「今度の検査で性別が分かるかもしれません。もし知りたくない場合は前もって聞きますので、教えてくださいね」

「あ……は、はい……！」

「今回はこれで結構ですよ。お疲れ様でした」

「ありがとうございました」

ペコリとお辞儀をして診察室を出ると、藍里は少しずつ膨らんできたお腹をそっと撫でた。

「性別……」

そう小さく呟くと藍里は病院を出て、普段よりもゆっくりとした歩みで帰路についた。