すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
着いた先のショッピングモールは、やはり近所のスーパーと違って人が多かった。

人に、特に男性にぶつからないよう注意し、斜め前を歩く智大ともあまり離れないようにしなければならない。
一緒に歩く時、ほとんど振り返ることのない智大とはぐれてしまったら連絡をとる勇気もないので、藍里はその背中を見失わないように毎回必死だった。

ここでしか売っていない必要な日用品や食材をいくつか買うと、自然な動作で智大が荷物を持ってくれる。
その後ろ姿をまた見失わないように歩いていたら、通り過ぎようとしたお店の前で飾られていた大人っぽいトレンチ風のワンピースが目に止まり思わず立ち止まった。

「買うのか?」

声が聞こえ振り向くと、前だけを見ていたはずなのに何故か藍里が止まったことを察したらしい智大が立ち止まってこっちを見ていた。

「う、ううん……見てるだけ……」

私には大人っぽくて……サイズも合わないし……。とまごまごしながら言うと、智大は飾られたワンピースを見て一言。

「……確かに、お前には似合わないな」

そう、さらっと言われて藍里の胸はズキッと痛んだ。

「行くぞ」

智大に促されて頷くと飾られたワンピースも智大の背中も見れずに顔を俯かせ、先程よりも足取り重く歩きだした。
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