すれ違いお見合い結婚～相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
素敵だな。と少し思っただけだった。
大人っぽいあんな服を着こなしてみたいと、そう思っただけ。
自分でも似合わないのは分かっていたから、ただ憧れの気持ちで見ていただけ。
背が低い藍里は子供サイズの服しか着れなくて、いつもどこか子供っぽくなってしまうから……。

分かっていたのにこんなに胸が痛いのは、朝に智大の優しさに一瞬触れたからかもしれない。

自分の為に買ってきてくれたサンドイッチと淹れてもらった藍里好みのミルクたっぷりのコーヒー。
もしかしたら、そこまで嫌われていないのではと少しでも思ってしまったからかもしれなかった。

とぼとぼと気落ちして歩いていると前の方から、あれ？……あーーっ！！と何か驚いた感じの男性の声が聞こえてきて思わず顔を上げた。

目を丸くしている男性は、驚いているものの顔は嬉しそうに笑顔だった。
傍らに綺麗な大人っぽい女性が立っていて、藍里はその人に目を惹かれた。

「なんだ智大じゃないか！久しぶりだな！」

「おー、偶然だな」

気さくに智大の肩を叩きながら笑顔で喋る男性に智大も普段家では見せない笑顔で応えていた。
その様子にもまた人知れず気落ちしていると、こいつ、俺の嫁さん。とか、初めまして。とか簡単な紹介が始まって終わっていた。

初対面なのにこんなに簡単に言葉のキャッチボールが出来るなんて凄いな……。と目線だけチラッと上げると、綺麗な女性と目が合ってしまった。
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