すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
手を繋いでゆっくりと歩き、たまにチラッと智大を見上げる。
真っ直ぐ前を向いている端正な横顔は何度見ても格好良く、すれ違う人達もやはりほとんどの人が智大を振り返る。

前まではそんな智大の隣に立つのに怯えていたり気後れしたりして、汐見の言葉通り、隣に立つのに相応しくなかったかもしれないが、惜しみ無い愛情を言葉や態度で伝え続けてもらったおかげで今の藍里は堂々と隣を歩けるようになっていた。

そして、大きいお腹の中にいる赤ちゃんにも自信をもらっている。

智大との愛情の結晶。
愛しさに溢れそっと触れると、また違和感を感じて一瞬歩みを止めた。

「どうした?疲れたか?」

「え……あ、ううん……大丈夫……」

じっと智大に見つめられ、藍里は慌てて首を振ってまた足を動かした。
家を出る前にも感じた違和感に首を傾げるが、今回も一瞬のことだったので特に気にすることなく歩みを進めた。

「ね、まずは久しぶりにリスのふれあい広場に行ってもいいかな?」

「いいけど、弁当もあるから俺は入らないからな」

前回一緒に入った時、藍里は瞬時にリスに囲まれたが智大は一切寄り付かれなかった。
その時の事を思い出したのか智大は眉を寄せていて、藍里は苦笑した。

「今回は智君の所にも来てくれるかもしれないよ?」

「別にいい。せっかくだからゆっくり戯れてこい」

どれだけ言葉を尽くしても智大は一緒に入ることに首を縦に振らなかった。
まあ、強制するものでもないかとふれあい広場に着いた時には完全に諦め、藍里はいそいそと広場の中に入っていった。
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