すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
〈智大side〉

それからも藍里が一瞬眉を潜めて腹を見て、すぐに元の表情に戻るということを繰り返していた。
あの様子だと、またかなり暴れているんだろうと思った智大は藍里が戻ってきたらせめてもの気休めに腹を撫でてやろうと思っていた。

「男の俺が出来るのはそれくらいしかないからな……」

内側から蹴られる痛みも、手や足を伸ばされて内側からグリグリとされる感覚も分からない。
出来ることといったら話を聞いて、痛みを感じるのなら少しでも和らげるために撫でてやることしかできない。

十分嬉しいし、すごく楽になるから助かるよ。と笑顔で話す藍里は妊娠前と比べると段違いに強くなったと思う。

そんな藍里を目を細めて見ていたら、何者かが藍里の傍を通りすぎようとしてその歩みを止めた。

「うわ……!何でこんなとこにいるんだよ」

「え?」

あからさまに嫌そうな声で、座り込んでいた藍里にそう言った人物を見て智大は一瞬目を見開いた。

藍里も同様に驚いた様子だったが、思ったよりも距離が近かったのか慌てて距離をとっていた。
その動作に眉を潜めた相手は何かを思いだし、そして納得したように一歩後ろに下がった。

「男性恐怖症だったな。距離が近くて悪かったよ」

「い、いえ……大丈夫、です」

「何でこんなところにいるんだ、汐見」

智大が柵に近寄り外側から声をかけると、汐見はパッと満面の笑みを浮かべて柵に近寄ってきた。
相変わらず他の人、特に藍里に対する態度と自分に対する態度が違いすぎると智大は溜め息をつき、内心頭を抱えた。
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