すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
どうやら汐見も動物は好きらしく、休日を利用してよくここに来ていたらしい。
もしかしたら知らない間にすでに何度か会っていたのかもしれないなと思いながら、藍里は二人が用意してくれたレジャーシートにお礼を言いながら座った。

「まさか永瀬先輩に会えるなんて……来ていて良かったです!」

「昨日も仕事で会ってたよな?」

「昨日は昨日、今日は今日ですよ!」

汐見の喜びように智大は若干引いているような気がしつつも、口を挟めない藍里は用意されていたお茶を一口飲む。
青い空に浮かぶゆっくりとした動きの雲を眺めていると、隣で智大が盛大なため息をついていた。

「明日は明日でまた会うだろ。今日は妻がいるんだから帰れ」

「ええ……!せっかくですし、もう少しご一緒させてくださいよ。……いいですよね?」

「え……あ、は、はい……?」

智大に向けて話していた声色と全く違う低く脅すような声色にビクッとした藍里は、咄嗟に頷いた。
智大が何か言いたげに藍里を見つめてきたが、藍里は一度頷いてしまった手前、やはり駄目だと言いづらくなってしまい然り気無く視線を反らした。

その瞬間、お腹に定期的に来る違和感に混じって少し痛みが加わりピクッと反応してしまったが、顔を反らしていたから智大に気付かれることなく藍里は戸惑いながらお腹にそっと触れた。
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