すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「綺麗な玉子焼きですね!さすが藍里さん、料理が上手です!」

「い、いえ……これは主人が……」

「そうですよね、先輩は器用ですから。味付けも完璧で美味しいです!」

「いや、藍里の作った方が何倍も美味い。……というか、いつまでいるんだ汐見。お前も何で来た、吉嶺」

手で額を押さえ、深く長い溜め息をついた智大の隣で苦笑しながら藍里が視線を前に向けると、目の前で汐見が智大の作った弁当を無我夢中で食べていた。
その隣で、今日は休日なのか私服姿で憎らしげに弁当を睨み付ける吉嶺までもいる。

「藍里さんがここの公園を気に入ってらっしゃるので、うろついてたら会えるかなと淡い期待を……」

「やっぱりストーカーか」

「立派なストーカーですね」

智大の言葉に汐見が頷くと吉嶺は、だから違いますって!!と反論している。
苦笑しながらお腹を擦り、そして稀にその苦笑が苦痛に歪む。

今までにない痛みが押し寄せてはすぐに引いていく。
もしやこれが前駆陣痛というものなのかと思うが、それならお産までまだ数日はかかるのだろうと判断した。

だからこそそこまで深く考えずにたまに訪れる腹痛に耐えていたのだけれど、ふと強く握り締めていた手に大きな手が乗せられたのに気付くと智大が心配そうな表情で藍里を見ていた。
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