すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「どうした?痛むのか?」

「と、もく……」

思ったよりも苦痛に満ちた声が出てしまい、智大同様に吉嶺や汐見が驚いたように藍里に視線を向けた。

突然今までで一番激しい痛みに襲われ、藍里は強く目を閉じるとさらにぎゅっと手を握り締める。
その手に込められた力強さに気付いた智大が藍里の体を支えようと肩に手を回すと、藍里は体を丸めた。

「藍里っ!?」

「智く……っ……痛、い……」

肩で大きく息をして、やっと痛みの波が引いたかと思い深く息を吐き出すと、またすぐに痛みがやってくる。
その感覚はどんどん強くなり、さっきとは反対に痛みが和らぐ時間は少なくなっている。

どうしてこんなにいきなり……。と思う反面、これは前駆陣痛ではなくて本陣痛ではないかと思い至った時、藍里は動くことも儘ならなくなっていた。

「まさか……」

「う、生まれる……かも……」

「「ええっ!?」」

藍里の言葉を聞いて取り乱したのは、吉嶺と汐見だった。

予定日まで後一週間はあるはずでしょう!?と何故か予定日を知っていて慌てる吉嶺に、と、とにかく病院に……!と弁当を片付け始める汐見。
藍里の体を支え、病院に連絡を取ろうとしたのだろう智大がスマホを取り出した瞬間にどこからか電話がかかってきたらしく着信音が流れた。

画面に表示された名前に智大は目を見開き、次いで眉を潜めたのを藍里がぼんやりと見ていたら智大が一瞬藍里に視線を寄越してから電話に出た。
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