すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
〈智大side〉

「永瀬の話は本当だ。話を聞いてから調べたが、見合い前の調査でもそのように報告が上がっていた」

「嘘でしょう……」

「嘘じゃない。妻が強くなければ、早い内に必ず心が壊れてしまっていた……それほどまでの仕打ちをし続けていた自覚はある」

「先輩……」

汐見の呆然とした呟きが掻き消されるように、容疑者が窓を開けて何やら騒ぎだした。
行ってくる。と室山が所定の位置に戻っていく背中を見つめながら智大は口を開いた。

「……汐見は妻が俺の隣に立つのに相応しくないと言ってたが、逆だ。本来なら、こんな俺が妻の隣に立つのに相応しくなかったんだ」

「そんな……」

「それでも、妻は最終的に俺を選んで受け入れてくれた。その想いに少しでも応えるために、俺は妻に相応しい人間にならないといけない。
他でもない、俺が妻の傍に居続けたいからな」

智大の言葉に汐見も、入江すらも何も言えなかった。
ただ、思いはさらに一つになった。

早くこんな事件を終わらせて、一刻も早く智大を藍里の元へと……!

「……先輩、突入の時は俺が行きますから、前みたいな無茶はしないでくださいね。万が一にも先輩が怪我なんかしたら、奥さんに顔向けできません」

「入江……」

「後始末は俺が頑張りますから、先輩はすぐに病院に向かってください。……別にあの人のためじゃなく、先輩に早く子供に会ってほしいだけですからねっ!」

「汐見……」

二人の言葉に智大がふっと口角を上げると、左手に右手の拳を打ち付けた。

「……頼りにしてるからな、二人とも」

「「はいっ!!」」

三人で窓から何やら叫んでいる容疑者を睨み付ける。
一刻も早く解決を。そう願ってやまないそれぞれの胸中を嘲笑うかのように、全てが終息したのは事件が起こってから二日経ってからだった。
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