すれ違いお見合い結婚～相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~

「全員動くなっ！！」

フロアの中央で大柄で目立たない服装をして、顔が分からないように目出し帽を被った男が拳銃を天井に向けて大声で言った。

一瞬何が起こったか分からなかった人達も今のが銃声だと理解したと同時に叫び、逃げ惑い、我先にとガラス張りの出入り口に向かおうとしたが、すぐに二回目の銃声が響いた。

「動くなと言っただろうっ！！」

「騒ぐなっ！！」

「その場に座って両手を上に上げろっ！！」

大柄の男の他にも二人、ATMの近くと出入り口の近くに同じような目立たない服と目出し帽を被った男二人が拳銃を人のいる場所に向けていて、逃げ場がないのを察した全員が恐る恐る座り込み手を上げた。

「これにありったけの金を詰めろ。いいか、余計な真似はするなよ？」

大柄の男は大きな黒いリュックを窓口の女性に投げ渡すと、女性は青ざめながら何度も頷き慌てて奥の方へと行く。

誰一人として動くことも言葉を発することもなく、ただ事の成り行きを静かに見守っている中、最初の発砲の瞬間も驚くことがなかった智大だけがその場で方膝を付き、手を上げながらも鋭い眼差しで男達の様子を伺っているようだった。