すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「警察が来てる」

その言葉に藍里は思わず顔を上げようとしたが、それよりも早く智大が、動くな。と制したので石膏のように固まってしまい動けなくなった。

「銀行の職員が奴等に気付かれないように通報したらしい。警察に気付けば犯人達は動揺するはずだから、その隙をつく」

黙って聞いていたけれど、最後の言葉には小さく首を捻った。
“隙をつく”とはどう言うことだろうと思っていると、智大はさらに驚くべき事を言った。

「隙ができたら、俺があの主犯格の男を押さえ付けに行く」

「っ!?」

何を言っているのかと、信じられない気持ちで動くなと言われていたのも忘れて顔を上げてしまった。
すると、近くにいた仲間の男が藍里に鋭い眼差しを向けてきたようだけど、すぐにまた違う方を向いた。

そう、ここには他にも二人、拳銃を持った仲間がいる。
智大が主犯格の男を押さえ付けても、その二人に撃たれる可能性があった。

ーーもし撃たれたらどうするの!?

そう聞こうにも恐怖で声が出ないし、智大に問いかける勇気もない。
小さく口を開けたり閉じたりしていると、智大がガラス張りの出入り口に視線を向けた。

タイミングを伺っているのが分かって、藍里はドクドクと嫌な音を立てる胸に震える手を添えると智大が、大丈夫だ。と呟いた。
< 46 / 420 >

この作品をシェア

pagetop