すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「撃てるものなら撃ってみろ。そんな玩具で本物同様の弾を撃てるなら……だけどな」

智大のその言葉に辺りは静まり返った。
ただ男二人は、何でそれを……。と明らかに狼狽えている様子だったし、押さえ付けられた男は盛大な舌打ちをしていた。

「玩具……偽物?」

「あの男の以外は偽物……?」

口々に周りからそんな声が上がり始め、男二人は咄嗟に顔を見合わせると手に持っていた拳銃を投げ捨て一目散に出入り口へと向かった。

……が、外へと飛び出る瞬間に二人よりはるかに体格のいい武装した男性とその後ろに同じ格好をした人達が立ちはだかり、あっと言う間に取り押さえてしまった。

「犯人確保っ!!」

その声が聞こえた瞬間、突然の事に唖然としていた銀行内にいた人達から歓声と拍手、涙ながらの声が聞こえてきた。

先頭にいた武装した男性が智大の方へと向かい、主犯格の男を引き受けると笑顔で何か話している。

もしかしたら知り合いなのかもしれないと震えが治まらない体を自分で抱きしめながら思っていると、俯いていた主犯格の男が不意に顔を上げて目が合った。

そして何か言葉にしているようだったけれど藍里には聞こえず、口の動きも読めない。
だが近くにいて聞こえたらしい智大と知り合いらしい男性は鋭い目付きで主犯格の男を睨み付けていたので、何か良からぬことを言ったのだけは分かった。
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