すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「おい、恨み言は後で聞いてやる。時間はたっぷりあるからな」

武装した男性がそう言うと主犯格の男がギリッと歯を噛み締め、またこっちを見た。
憎悪の眼差しに一瞬息が詰まり、背筋に冷たい汗が流れる。

その眼差しから逃げるように顔を俯かせ、必死に視界に入れないようにしてからどれくらいたっただろう。
少しの時間かもしれないし、もっと経っていたかもしれない。

周りから、気分の悪い人はいませんか?怪我はありませんか?と声が聞こえてきた。
ふと、自分のいた場所が影になったことに気付いて視線を上げると、さっき見た人とは違う武装した男性が片膝をついて笑顔を向けていた。

「よく頑張ってくれましたね、もう大丈夫ですよ。怪我はありませんか?」

「ゃ……っ!?」

思ったよりも近い位置にいたその人に驚き、小さく悲鳴を上げる。
まだ混乱していると思われたのか、その人は困ったように眉を下げながら手を伸ばしてきた。

「動けますか?もし無理そうでしたら手をお貸しします」

他意はない。悪意もない。
分かっているのに怖くて仕方なく、近付いてくる手に恐怖を感じずにはいられなかった。

伸ばされた手が肩に触れようとして無意識に、嫌……やだ……。と声が漏れたその時、伸ばされていた手の動きを止めるように横から誰かが掴んだ。
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