すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「“あの”……ですか?」

「ご存知ないんですか?永瀬さんの旦那さん、特殊班の中でもとても優秀で有名なんですよ?」

「優秀……」

「そうです。永瀬さんが現場にいなかったらまだまだ事件は膠着状態だったはずです!
だから巻き込まれた皆さん含め、私達警察にとっても運が良かったんですよ」

笑顔でそんなことを言っている二人から視線を落とし、毛布の上で重ねた自分の手を見つめた。
そして、あの時思ったことをポツリと口にした。

「でも……危険でした。二つは玩具だって……偽物だって分かってたようですけど、もしかしたら本物の拳銃を持っていて……犯人が、本当に撃ってきていたかもしれないのに……」

もし目の前でそんな事が起こったら……。
そう想像するだけで怖くて、手が震えてしまいそうだった。
藍里の言葉に女性警察官二人は顔を見合わせて頷き合うと、さっきとは違う真剣な顔で、そうですね。と同意した。

「永瀬さんの話では、二つが偽物だとすぐに気付いたそうです。
そして、本物は一つだけだということも……」

「だから永瀬さんは犯人が発砲した回数を数えて機会を伺っていたそうなんです」

「回数……?」

どう言うことか分からず首を傾げると二人は、本当はあまり話してはいけないことですけど……。と前置きした上で藍里には知り得ない事件解決までの裏側を少し詳しく話し出した。
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