すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「前にも言ったように、睡眠薬は体調やその時の状況に合わせて飲んだらいいわ。ただ、どうしても眠れなくて生活に支障を来すようだったら、その場合はちゃんと飲んでね。
そうでないと持病の喘息の方が悪化する可能性もあるから」

「はい、その時はちゃんと飲んで休もうと思います」

薬を飲む回数を減らす決意はしたが、それは夜に熟睡できなくなることを意味する。

智大と一緒のベッドで寝ている時、もしくは寝室に入ってきた瞬間に目覚めてしまうことがあるかもしれない。
いや、そもそも最初から緊張して眠れないのでは……。

そう今から考えて緊張してしまいそうになったが、今朝のおにぎりを思い出し小さく首を振った。

智大の大きな手で握った藍里サイズの、藍里のためだけの小さな可愛らしいおにぎり。
それには少なからず智大の何かしらの気持ちがこもっていたはずだと。
その気持ちに少しでも応えるために、藍里も少しだけ一歩を踏み出す気になれたのだ。

「貴女と旦那さんがより良い関係になれるのを願ってるわ。またいつでもカウンセリングに来てね」

そう言って女医は念のためにといつもと同じ量の睡眠薬を処方してくれた。
お礼を言って診察室を出て会計を済ませると、藍里はその足で職場へと向かった。
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