すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「小蔦、こっちは洗い終わったけど、そっちはどう?」

「こっちも大丈夫です」

じゃあ流すよー。と先輩がシャワーを流すとアフガン・ハウンドのレオンが気持ち良さそうにしている。
レオンは大型犬なので一人で洗うよりも二人で、人間も犬も早々に体力を消耗しないように手早く、けれど丁寧にシャンプーやトリートメントをしていった。

「昨日はあんまり休めなかった?顔色あんまりよくないけど」

「昨日はちょっと色々ありまして……。ゆっくりは出来なかったんです」

ショッピングモールで中学時代の同級生に会ってしまったり、最後に寄った銀行で強盗に鉢合わせて気付いたら病院にいたり。
本当に色々ありすぎて、家に帰ったらご飯も食べずに短いお風呂に入ってすぐに眠ってしまったくらい疲れていた。

寝坊するくらい寝てしまったので寝不足ではないのだけれど、昨日の恐怖の名残だろうか。
自分でも顔色が悪いのは分かったので化粧で誤魔化そうとしたけど完全にはカバーできなかったらしい。

心配そうな眼差しを送ってくる先輩に苦笑して藍里はレオンのタオルドライに勤しむ。
事件の事は口止めされてるので、例え先輩でも話すことは出来なかった。
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