すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「あんまり無理しないでよ?万が一にも喘息が酷くなって最悪、退職ってことになったら嫌よ?
調子悪い時は休んでいいんだから」

「……ありがとうございます。どうしても無理な時はちゃんと休みます」

先輩の言葉に藍里はそう答えるが、簡単に休むつもりは更々なかった。

大好きな愛犬、豆柴のムラサメさんは実家にいるのでここ最近は会えてない。
その寂しさを埋めるためにも藍里は仕事を休むことなく来て、トリミングと言う形で色んな子達と触れ合いたいのだ。

ドライヤーを当てながら長い毛を乾かすと、レオンはみるみる間に艶やかな毛へとなっていく。
その姿に藍里は目を細めて微笑んだ。

「……本当に小蔦は動物が好きよね」

「大好きです!見てるだけでも癒されるんですけど、触れ合うのが一番癒されて幸せです」

「それだけ好きなのに何でムラサメさん、だっけ?結婚した時に連れてこなかったの?」

新居が新築だから?と聞かれて藍里はよく懐いていたムラサメさんのことを思い出しながら眉を下げた。

「……主人がアレルギーなんだそうです、犬の」

「あー……」

そう、結婚する時にどうしても連れて行きたかったのだけど圭介に止められたのだ。
智大は犬アレルギーだから、出来れば連れていくのは控えてあげてほしいと……とても申し訳なさそうな顔で。

そう言えば、何故智大本人ではなく圭介が言ってきたのか。
智大なら一言、連れてくるな。と言ってきそうなのにと今更ながら不思議に思い藍里は首を傾げたのだった。
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